研究トピックス


学ぶ / 思考する
♦ 人工知能
ライエル・グリムベルゲン [情報科学]
♦ 知の融合
松尾 徳朗 [情報科学]
♦ 脳波解析
深見 忠典 [応用生命システム工学]

動く / 流す
♦ マイクロバブル
幕田 寿典 [機械システム工学]
♦ ライフスタイル革命
仁科 辰夫 [物質化学工学]
♦ レオロジー
西岡 昭博 [機能高分子工学]

伝える / 表す
♦ 光の革命
城戸 淳二 [機能高分子工学]
♦ 物質の究明
香田 智則 [機能高分子工学]
♦ 魔法の紙
川口 正剛 [機能高分子工学]
♦ 健康管理システム
横山 道央 [応用生命システム工学]

省く / 除く
♦ 包接化合物
波多野 豊平 [物質化学工学]
♦ 省エネ・省資源
杉本 俊之 [電気電子工学]
♦ 非破壊検査
柳田 裕隆 [情報科学]
♦ 労力削減
野長瀬 裕二 [工学部共通]


 

▼ 学ぶ / 思考する

人工知能
[情報科学]

ライエル・グリムベルゲン

 私の研究室では、「人工知能」を研究しています。 人間が問題を解決するときに何をどのように考えているかを研究して、 コンピュータが人間と同じ問題を解決できるようにプログラミングします。 人間の問題解決を研究するため、私の研究室ではゲームを使った研究をしています。 ゲームの目標は 「勝つ」 つまり 「相手を倒す」 です。 相手を倒すために相手より良い手を指すことがゲームの中で解決しなければならない問題です。 相手を倒すために「探索」(先読み)と「評価」(こうなると自分が勝ちそうか自分が負けそうか) をすることが重要なポイントとなっています。 特に将棋、囲碁、Amazons、Clobberの4つのゲームを利用して、人間の「探索」と「評価」の研究をしています。 当研究室で開発したSPEARという将棋プログラムは毎年、「世界コンピュータ将棋選手権」という大会に参加しています。 気力はアマ2段ぐらいです。 Amazonsはまだ新しいゲームであまり知られていませんが、可能な手の数が非常に多いので、先読みは難しくて、 探索アルゴリズムの研究によく使用されています。 囲碁とClobberの研究はまだ始まったばかりですが、共に人間の思考をプログラムするために使いやすいゲームです。

知の融合
[情報科学]

松尾 徳朗

 私たちが生きている世の中にはさまざまな「知」があります。 特に、社会・組織の知と科学技術の知の融合を対象としており、 とりわけ物や権利の売買に代表される経済学の知と、 あらゆる情報科学の知を種として、 それらの融合により創発した情報経済学および電子商取引に関して研究しています。 電子商取引においては従来の経済学の知だけでは解決困難な新しいタイプの問題が次々と発生しています。 それらを解決するには、古典的な経済学と情報科学を基礎として「学び」、 世の中で何が起こっているのか、何が問題なのかを厳密に「知る」ことが肝要です。 そして次に、経済学と情報科学の融合および新しい概念や理論を「考える」とともに、 シミュレーションおよび定理の証明により妥当性を検証し、新しい情報経済理論を開発していきます。 情報経済学は次世代の電子商取引を安心・安全で効率的な電子経済市場を作り出すことに貢献できます。 本研究の有望な適応領域として、エージェントへのタスク割り当て、複数論点交渉などがあり、 インターネットやコンピュータに関わる人・組織・社会の不自由を自由に変える力を持っています。

脳波解析
[応用生命システム工学]

深見 忠典

 最近では、ストレスによる睡眠障害やうつ病、高齢化による認知症などの精神疾患が増えています。 病院では、精神科の医師は、患者の診察や検査結果から総合的に病状を判断しています。 しかし、こうした診断は、医師の長年の経験に基づいた主観的な判断でなされています。 そこで、検査データを使って患者がどのような病気であるか、病状がどの程度であるか、 また治療によってどの程度よくなったのかを数値化することは非常に重要になってきます。 私達の研究グループでは、人間の精神や心理状態を捉えるために脳から生じる電気活動である脳波と呼ばれる波をコンピュータによって解析することで、 病気の種類と脳波にどのような関係があるか調べ、 症状がどの程度なのかを数値で示すことを目標にしています。 実際の研究では、精神病院の医師たちと共同で研究を進めており、多くの入院患者の脳波を解析しています。 もし、脳波で病状を数値化できれば、診断や治療に大変役立つ情報となるでしょう。

 

▼ 動く / 流す

マイクロバブル
[機械システム工学]

幕田 寿典

 皆さんはマイクロバブルという言葉を聞いたことがあるでしょうか? マイクロは「μm」(マイクロメートル=1/1000ミリメートル)のことで、 バブルはもちろん「泡」のことですから、 概ね1~100μmぐらいの小さな泡のことです。 マイクロバブルを含む流れでは、気体の溶解が促進される、 不純物がバブル表面に付着する、流体の抵抗が減る、加えた音より高い音を反射するなど、 マイクロバブルを含まない場合の流れに比べ、流れそのものの挙動や流体中の物質の動きが大きく変化します。 マイクロバブルはこれらの特長を生かして、液体に気体を溶かし込むプロセスの高効率化、 液体中からの汚れの除去、超音波造影剤など、実際に様々な用途に用いられています。 現在私が行っているのは、超音波と針を使って、20μm以下の均一なマイクロバブルを生成する技術や、 マイクロバブルの周りに樹脂膜を形成させて作る中空カプセルの研究です。 将来的には、血液中に導入が可能なバブル(カプセル)の開発や、 ガスを全て溶解させる技術の開発などを目標にしています。

ライフスタイル革命
[物質化学工学]

仁科 辰夫

 真に機能的なものは単純で美しい。
悪魔が作ったと嫌われている界面での電子の電子移動を研究し、その機能を飼い慣らし、応用する。 その一つが急速充放電リチウムイオン二次電池の研究。 携帯の充電が30秒でOK、電気自動車の充電が3分でOKとかになれば、 ライフスタイルの革命だ!これを目指している。 電極反応自体は10秒でもOKなことを確認済み。 じゃあ、何が充電を遅くしているの? 容疑者は、電気を集めるために使われているアルミニウム。 アルミニウムは腐食しやすいけど、リチウム電池では腐食しない。 それは表面に不動態皮膜ができているから。 でも、不動態って絶縁体で、電気を通さないんじゃないの? でも、リチウム電池ではバンバン電気が流れているじゃん! なぜ?世の中まだまだ不思議だらけ。真犯人は点欠陥らしい。 これを積極的に飼い慣らしてやれば、リチウム電池の内部抵抗を小さくして急速充放電が可能になるじゃん! 副業は情報化学(情報とはエントロピーだ!)と品質管理(合理的な手抜きとは…?)。

レオロジー
[機能高分子工学]

西岡 昭博

 プラスチック材料を成形する際には、溶かして、型に流し込み、冷やして固める工程を経ます。 この工程において重要となるレオロジーと呼ばれる溶けた材料の流れの学問が私の専門です。 なぜ流れが重要かというと、成形する時に流れる状態や硬さが製品の出来上がりに影響するからです。 最近、私はレオロジーの考え方を応用して、 これまでの常識では不可能と言われていたお米100%でパンを作ることに成功しました。 パンとプラスチックでは全然違うもののようですが、 材料工学の考え方で取り組めば、お米も材料の一つに変わりはないわけです。 お米100%パンの成功のポイントは材料を分子の構造から考え、粘らせる方法を見つけたこと。 私の専門はプラスチック成形ですが、そこだけに執着するのではなく、 分野を越えて自分の専門の技術でしかできないようなことを 異分野で生かすということにとてもおもしろさを感じています。 このお米パンの開発の過程で、アルファ化した粉を瞬時に作る方法を見つけ特許を取得。 現在は、特殊な粉砕機を家庭用に市販化するための開発にも取り組んでいます。

 

▼ 伝える / 表す

光の革命
[機能高分子工学]

城戸 淳二

 絶縁体と思われていたプラスチックに、電気が流れることを見出した白川博士らは2000年にノーベル賞を受賞されました。 今では、さらに進んでプラスチックが電気で光ります。 私の研究室では、有機材料で作った薄い膜に電気を流すことで発光させる「有機ELデバイス」について、 発光材料などの開発を主として世界でもトップレベルの研究を行っています。 この有機ELデバイスは「きれい」「紙のように薄い」「面で発光する」という特徴を持ち、 超薄型ディスプレイやフィルムのようなフレキシブルディスプレイへの応用も盛んに進められています。 そして私の研究室では、この有機ELでエジソン以来の光の革命を起こそうと、有機ELを用いた白色照明への応用に挑戦しています。 有機ELでは白い光を出すことが困難とされていましたが、当研究室では世界で初めて有機ELを白く光らせることに成功しました。 この有機ELを使った紙のように薄い白色照明は、蛍光灯に替わる照明として開発が進められています。 この開発が進むと、今まで照明の取付けが不可能と考えられていた所にも取付けが可能となり、 私たちの生活をより快適にすることができるようになるのです。

物質の究明
[機能高分子工学]

香田 智則

 応用物理学は、文字通り、物理学を役立てるために工夫をする学問であり、 基本原理の探求から、「ものづくり」まで、幅広い分野にまたがっています。 私の専門は統計物理学を「ものづくり」に役立てることです。 我々の身の回りの物質の多くが分子からできています。 中には、食塩や金属材料のように分子が定義できないものもありますが、 私は、物質は非常に多くの分子からできているという立場で研究しています。 すなわち、物質の性質はそれを形成する分子の特徴が反映されると考えます。 統計物理学は、分子がたくさんたくさん集まって、個々の特徴が、 総体として物質の性質として現れる仕組みを明らかにする学問でもあるのです。 従いまして、私の研究が発展していくと、 携帯電話の表示部位に使われている液晶を改善するためにはどのような分子を作れば良いか、 などを提案することができます。 その提案を、分子を合成する専門家、すなわち、分子を実際に作る専門家と共有することが、 新しい性質を持つ材料の開発につながっていきます。

魔法の紙
[機能高分子工学]

川口 正剛

 私たちの研究室では、「紙と電子ディスプレイの両方の長所を兼ね備えたフルカラー電子ペーパーの開発研究」を行っています。 具体的には、紙の長所である「見やすく疲れない」、「携帯性に優れる」、「取り扱いが容易」、 「メモリー性を有する」、「電源が必要ない」といったことと、 電子ディスプレイの長所である「書き換えが可能である」、「デジタル・データを表示できる」などを併せ持つ、 何度でも書き換え可能な”魔法の紙”を開発しています。 ⅠT技術の進歩はペーパーレスな社会の到来を予想させましたが、紙の使用量はむしろ増加しています。 オフィス等の会議資料として使用されている大量の紙をこのディジタルペーパーで置き換えることができれば、 低資源、省エネひいては環境への負荷も低減されると期待されています。 この表示技術の中で最も鍵となるのは、機能性ナノ高分子微粒子のデザインにあります。 高分子合成技術を駆使することによってデザイン合成した微粒子は非常に高性能で、 この微粒子を使った”何度でも印刷することができる魔法の紙”が完成する日は間近です。

健康管理システム
[応用生命システム工学]

横山 道央

 携帯電話を使った「健康管理システム」の開発に取り組んでいます。 測って、処理して、飛ばす研究です。 ”測る”は、脈拍や呼吸等を測る小型センサの開発です。 すでに光るをあてて脈拍を測る方法はありますが、 ジョギングなどの運動中にも測れるようなるべくコンパクトにすることと、 血圧や血糖値等より多くのデータがとれるようにしたいと考えています。 ”処理する”は、脈拍なら1分間に何回かを数え、 通常値かそうでないか判断するシリコン集積回路ICチップが必要ですが、 これもできるだけ小さくして少ない電力消費で稼動させることを目指しています。 現在の技術では電力は1日も持たないので、ローパワーで処理するプログラムの開発が必要です。 ゆくゆくは運動している人の動きをエネルギーに変えて使うことも考えています。 そして”飛ばす”は、携帯電話等を用いてデータを遠方に送るための無線通信回路の研究です。 完成すると指輪か腕時計の中に測って処理するシステムを組み入れ、 携帯電話を利用して自宅や主治医にデータを送り健康管理に役立てることが可能になります。

 

▼ 省く / 除く

包接化合物
[物質化学工学]

波多野 豊平

 アルキルフェノールは、界面活性剤やプラスチックの原料として使用されています。 しかし、これらは魚類に悪影響を与えるため、環境への流出が問題となっています。 そこで我々は、水に溶け出したアルキルフェノールを「包接」という現象を利用して除去する新しい方法の開発を行っています。 包接とは、ホスト分子の形に合ったゲスト分子が取り込まれて化合物となる現象をいい、 この方法を利用してビスフェノールAという物質の除去に成功しています。 包接化合物をうまくデザインすると、自然界に散らばった環境ホルモンだけを取り除くことができます。 こういう分野で活性炭が良く使われますが、活性炭は何でも吸着して海の中では魚の養分までも吸着してしまいますが、 包接という方法を使うと、生き物を育てるために必要な栄養分はそのままにして有害物質だけを取り除くことができるわけです。 応用科学のおもしろさは色々ありますが、一つに分子レベルでものを作れること。 そして有機合成についてはまだまだわかっていないこともたくさんあるので、いろんな発見に出会えます。 次に自分がどんな発見と出会うか、ワクワクしながら研究しています。

省エネ・省資源
[電気電子工学]

杉本 俊之

 複数の電極の間で特殊な放電を発生させ、工学的に利用する研究を行っています。 1)放電による電極の発熱を利用して薄い金属やガラスなどの微細な加工を行う装置、 2)放電で発生するイオンを利用して対象物に接触せずにその表面の電気的特性を評価する装置、 3)プラスチック材料への塗装を効果的に行うための無帯電スプレー塗装装置の開発などを行っています。 3)の塗装装置は、従来まで塗装不良の原因となっていた静電気の発生を抑制し、 より均一な塗装面の実現を目指すものです。 塗装品質と効率の向上によって、塗料の削減効果、乾燥に必要な熱エネルギーの削減効果が得られます。 また、従来までメッキが必要であった金属鏡面の形成を塗装で実現できるようになれば、 メッキに必要な水資源の削減と電気エネルギーの削減にも効果があります。 このように、新しいコンセプトでも「ものづくり」の高度化、省エネルギー化、 省資源化を目指した研究を行っています。

非破壊検査
[情報科学]

柳田 裕隆

 こうもりは暗闇の中を飛ぶときに超音波レーダーを使っています。 超音波は光と違い不透明な(目では見えない)ものの中も伝わるので、暗闇では非常に有用なのです。 私たちはこの不透明な物質の中も伝播する超音波の特性を使い、 木材やコンクリートでできた柱の内部構造を見よう!という研究をしています。 300回以上の超音波スキャンを行うと内部構造を画像化することができ、 亀裂や腐食などの欠陥を見つけることができるようになります。 このような測定対象物を壊さずに中の状態を検査することを非破壊検査と言います。 私たちの検査システムでは、超音波の波長と同程度のサイズの欠陥を発見することが可能ですので、 腐食を早期に発見できると考えています。 正確に亀裂や欠陥の大きさや場所を特定できれば、 建物の修理を行う際に最小限の修理にとどめることができますし、 欠陥がないことがわかれば修理をしなくてよいことになります。 この研究は、単なる修理の省資源化や労力の節減といったことだけではなく、 歴史的な建造物の修復において、 元の材料を最大限に生かすために修復を最小限に抑えるといったようなことにも応用されています。

労力削減
[工学部共通]

野長瀬 裕二

 私は、工学的手法を活用した新事業創造を研究しています。 一例として、IT(情報技術)を用いたアプリケーションサービスについて、あるベンチャー企業と共同開発しています。 IT技術は、仕事の生産性を向上させるために有益なものです。 無駄な仕事を「省き」、仕事の生産性を向上させていく。 少子化を迎える我が国が発展するには、こうした「労力を削減する」取り組みが不可欠と言えるでしょう。 また、少子化社会では、働く人の能力を開発し、大切にしていくことも重要となります。 中小企業の経営者が、各従業員の仕事の実績把握、能力開発の状況をITで把握し、 コミュニケーションを取りながら成長を促していく。 そうしたシステムを実現していきたいと思っています。 経営者が海外出張中でも、携帯で部下の業務報告を確認し、タイムリーに部下の自己実現を応援していく。 伸びる企業は、このようにIT活用が不可欠となるでしょう。